明け方の空が明るくなるように

夕焼けの空が色を鮮やかにさせるように

雲間からの光が差し込むように

それは儚く美しい













−光−













最近、ご飯を食べなくても平気になった。
白い炊き立てご飯を見て、吐き気がした。
お前、つわり…?
なんて笑い混じりで心配されて、でも笑ってごまかして。

魚の生臭さも感じない。
野菜の苦さも感じない。
嫌いなものにも何も感じなくなった。

生きる為の糧。
力の源。

何も口にしなくなってから、その言葉は嘘だと気付いた。
だってほら、俺は今日も元気。












任務中に怪我をした。
腕に出来た裂傷は、血をだらだらと流していた。
サクラちゃんが真っ青になって。
サスケが目を瞠って。
カカシ先生は、俺の傷は直ぐ治るのを知ってるくせに、すぐさま俺を病院に運んだ。

痛い?痛い?

涙目で聞いてくるサクラちゃんに大丈夫だと、痛くないから大丈夫だと言った。
だって、痛くないんだ。
すぐ治るし。

あれからしばらく経った。
俺の傷は、まだ癒えない。













朝、起きたら声が出なくなっていた。
これがいわゆる風邪をひいたというやつだろうか。
今までひいたことが無いから分からないけれど。

咳も出ないし、熱も無い。
どうやら声だけが枯れたみたい。

これは結構不便かもしれない。
カカシ先生は口の動きで言葉を読んでくれてるみたいだけど。
サスケもサクラちゃんも読唇術はまだ出来ないんだよな。
















あれからしばらく経って。
調子が悪いなー、と思った直後に身体から力が抜けた。
ガクン、と膝を折って倒れたらしい俺に向かって、掛けてくる足音が聞こえた。












うっすら目を開けてみる。
寝起きみたいに、それか眠たくて仕方ないときみたいに、目蓋が重くて重くて仕方ない。
何人かの顔が見えた。
霞掛かったようにしか見えなくて、それが誰だか分からないけど。

…誰?

誰とは誰のことだろう。
誰の顔だろうと思ったのだろう。

空気が震えている。
大きな声で叫んでいるのだろうか。
それとも風が吹いているのだろうか。













大切だった何かで、胸が熱くて痛くて。













それは光

幻かもしれない

一瞬だけ、人の目を奪い、心を捉える光

儚く消える