笑いかけてくれたり、
頭を撫でてもらえたり、
優しくしてくれただけで、
とても、幸せ。
−たとえばこんな風に−
夢かと思うくらい、
信じられないくらい、
嘘でもいいから、
好きだ、と言ってもらえたなら。
「シノ」
「シノ」
「シノ」
ベッドの中。
布団を頭まで被って何度も呟く。
それはまるで呪文のようで、何か力を持っているみたいで。
きゅうっと自分の身体を抱きしめて、もう一度、呟いた。
「シノ」
小さく息を漏らしてから布団から顔を出し、固く握っていた手を開くと、手ののひらが白くなっていた。
しばらくすると、夜目にもなれてきたおかげで、だんだんと赤みが戻ってくるのが分かる。
ジンジンと微かに痺れる感じが、まるでシノに触れたときのようで。
あれは気のせいかもしれないけれど、あの手のひらに包まれた自分の手はたしかに熱を持っていた。
シノの手は少し冷たくて、反対にナルトの手はあったかくて。
混じった体温が離れがたくなってしまうほど温かかった。
それは繋いだ手だったり、ぶつかった肩であったりしたけれど、どれも同じように痺れる感じする。
「痺れてる…ってば」
もう一度、ゆるく握って開いて、ナルトは意識を眠りへと沈めていった。
闇にまぎれて戻ってきた蟲を指に乗せ、しばし目を閉じる。
あの子は今日も元気に過ごせただろうか。
修行や任務での怪我や反省などはいつものこと。
ただ、あの子自身も気付かない痛みがこれ以上増えなければ、と願う。
「…ナルト」
今は見えない明るい太陽のような、今、自分を優しく照らしている月のような、そんな子ども。
笑顔でいて欲しかったり、
触れたいと思ったり、
隣に立っていきたいと、
それが、望み。
夢なんかにさせないほど、
自分をさらけ出して、
すべて本当の心だと、
好きだ、と囁き続けるから。