神様


神様


どうかこの願いを叶えてください


もう、あなたしか頼れるものはないのです


神様


神様


神様











―祈る―











忍者らしからぬ足音を立てて走りよってくる人影。
分かりすぎる気配に振り返ると、やっぱり思い描いていた人物が大きく手を振りながら近寄ってくるところだった。


「シカー!シカマルーってばー」

「うるせぇ」


ドベだ、ドタバタ忍者だ、という代名詞が付けられたコイツ、うずまきナルト。
光を集めた金髪と、空色をつめこんだ瞳と、それよりも輝く笑顔を持つ少年。
もう覚えてないくらい前から知っている。
いつかなんてことは忘れたが、初めて会った時のコイツは今も鮮明に思い出せる。


「なぁなぁ、俺ってばシカマルに聞きてーことあんの!」

「あ?」

「だってシカマルってば頭いいじゃんか?」

「…まぁ、別にそんなことはいいんだよ。で?何だ?」


頭が良いだの何だのは、ナルトに言わせるとIQや試験といった事ではないらしい。
本人にもうまく言葉に出来ないらしいが、コイツにそう言われる時、嫌味は感じない。


「『かみさま』って何?『かみさま』って『祈る』もんなのかってば?」

「…あ?」


(かみさま…?『神様』ってことだよな…)


…あぁ、コイツは…ナルトは。
俺は無神論者で実際神なんてどうでもいい。
けれど、けれど。



ナルトは『神様』を知らない。
『祈る』ということも。





『神』という存在さえ、名前さえも

ナルトには祈るものがない

だから

祈らない

願わない

それが叶えられるものではないと知っているから

神様、という名前も、存在も、人が無意識に頼りにしてしまうものだとも知らない

ナルトの中にあるものは、自分と、火影と、その他の人間

それと、シカマルという、俺





おそらく、班の仲間と生まれて初めて行ったであろう初詣も、よく分からなかったに違いない。
人が呟く「あぁ、神様の馬鹿」などという冗談にさえ、疑問を浮かべたに違いない。












「神なんてめんどくせぇもんに祈ったりすんな…お前は…」

「シカマ…」

「お前は、俺に祈れ」

「…!」

「俺は、お前に祈る」