「奈良ー奈良ー!!」
「なんすか…四代目」
「もう、つれないなぁー!一緒にベビー服見に行こうって言ったじゃないか!!」
「…マジだったか、あれ…」
「当たり前でしょう。だってもうすぐ生まれるんだよ!?奥さんと僕に似てめちゃくちゃプリティーで天使のように可愛い子に違いないよ!?」
「それよりお前、仕事どうした…」
「そんなもん…三代目拉致って執務室に縛り付けてきたから問題ないよ」
「……(三代目…!)」
「普通のベビー服はちょっと買ってあるけど、やっぱりきぐるみ動物系は外せないよねー」
「…着せるのか?」
「でぇ〜、パパvvなんて呼ばれた日にはもう僕どうしようー!!きゃぁー!!」
「おい」
「ぜったい嫁になんか出さないよ!!あぁ、僕のナルくん…!!」
「…ナル『くん』?男なのか?」
「え?うんうん、これ勘だけど絶対男の子だよー」
「男で嫁にはいかねぇだろ」
「何言ってるの!?ナルくん可愛いよ!?ああぁあぁぁ、どうしよう、この世の中は狼だらけだよ!!どうしよう奈良!!」
「知らねぇよ」
「息子さんを俺に下さい!なんて言われたら僕何しちゃうか分かんない…っ!!」
「嫌われんぞ」
「っ!!?」
−君はボクの宝物−
「…ってこともあったな」
しぱー、とどこか遠くを見つめて煙を吐く父親に、シカマルは四代目の姿を思い出す。
「俺、あれは絶対笑顔で人殺すようなタイプにしか見えなかったぞ?親父」
「あぁ、あれだ。親馬鹿ってやつだ」
「その前に色々否定しろよ。仮にも四代目火影だろ」
「めんどくせぇ。あぁ、きっちり生まれた子どもは男だったしなー」
そして外見(だけ)は親に似て、文句無しにとびきり可愛い。
というか、あの親の性格が似なかったせいで、なお可愛い。相乗効果だ。
舌ったらずで一生懸命しゃべるところや、うなずくたびに金髪をふわふわさせつつ頭の重みでよろける姿など、何度四代目の仕事を中断させたか分からない。
もちろん四代目見立てのアニマル系ベビー服は恐ろしいくらい似合っていた。
「しかもなー…めんどくせぇことに、ナルトの言動一つでその時々の気分が左右されてな…」
「…ホントに火影か?つーか、昔からだったんだな」
「四代目がナルトに『パパきあい!』とか言われた日には…」
「…親父、気色悪いぜ…その真似」
「ほっとけ」
あの時には…本当に火影ながら絞めてやろうかと思ったほどだ。(というか絞めかけた)
ナルトがぷいっと顔を背けた途端。
四代目はめそめそ泣き崩れ(ウザイ)、カカシはしてやったりとにやけ(ショタコン)、うっとうしい事この上なかった。
おかげで無常にも書類を出す事も報告をすることすら出来ずに立ち尽くすしかない。
それだけならまだしも、機嫌を損ねたナルトは、あろうことか自分の足元にぴたりと引っ付いてきたのだ。
途端に鋭くなる二人分の視線と殺気にさらされ、とばっちりはごめんだと幼子を抱えて飛び出した。
もちろんナルトに
「パパもかぁしも来ちゃめーよ!!」
と言わせることは忘れない。
「…誘拐…?」
「人聞きの悪い事言うな。そのおかげで今こうしてられんだろうが」
「…あぁ、初めてナルトがウチ来た時か…」
あの時は大騒ぎになったっけ、と二人で顔を見合わせ同時にため息をもらす。
それを引き起こした張本人は、ただいまシカマルの膝の上でお昼寝中である。
すよすよと穏やかな寝息をたてて眠るナルトの髪をそっと梳く。
ふにゃ、と口元を綻ばせるところと見ると、どうやら気持ちいいらしい。
「ま、こいつに関しては感謝するぜ、親父」
「おう、心の底から崇め奉っとけ」
「…めんどくせぇから遠慮しとく」
「ナッルくぅぅぅん!ごめんねぇーパパ迎えにき…ごふぁっ…!」
「うるせぇよ」
「げほ…な…何するんだよ奈良ぁー?」
「息子が起きるぞ?」
「うっわぁ…かっわいー…手ぇ握ったまんま寝てるよー」
「離そうとしねぇんだよ」
「言ったでしょ?奈良の息子はナル君を好きになるって」
「ってことはナルトはうちに嫁にくるってことだよな…奈良ナルト…ふぅん、楽しみだ。なぁ?4・代・目」
「…だ、駄目駄目やっぱ駄目ぇー!ナルくーん!!ナルくんはずっと僕と一緒にいるんだーっ!」
今も昔もこれからも
君は私を好きになる
私は君を好きになる
この繋がれた手のように
離すことなく
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