「ナルト」
「ナルト」
「ナルト」
あぁ、どうして名前を呼ぶだけで。
03 結局の事いつもお前は死に場所を求めてるじゃねーか
腕の中で寝息を立てているぬくもりを、抱きしめる。
子供特有の体温は、どこか眠気を誘うもので。
愛しいゆたんぽはきっと良い夢を見せてくれるに違いないが。
でも…寝ちゃうとナルトの寝顔が見れないんだよねー。
などと考える上忍がここに一人。
深いようで眠りの浅いナルトの寝方は、今まで生きてこられた術に違いない。
けれども自分の腕の中では安心した顔で寝てくれることが、嬉しい。
下忍でドベで、意外性ナンバーワン。
夢を語る様は強い意思を感じられる。
と、言われている子供が、実は自分と同じくらいの強さを持っていたなんてこと。
自分を含めた数名しか知らない。
しかもやっかいな奴らばっか知ってるんだよねぇ、まったく。
秘密の共有は、一種の契約であると同時に、近い存在であること。
明らかに何も知らない奴よりかはナルトにとって近しい人であるに違いない。
同じ立場の奴が知っていなければ。
埋めたはずの霧隠れの2人も。
儚げで優しい笑みを浮かべていた病弱な特別上忍が、死んだという話が流れたと同時に嬉々としてナルトの専属になったことも。
ナルトと一緒にいるための場所を作る為に一族殺して里を抜けた車輪眼も。
「…んぅ…」
「ナルト?起きた?」
「…カカシ?」
ごしごしと目を擦りながら起き上がるナルトの、起きた拍子に捲れた毛布を掛けなおす。
「まだ夜中だよ。もうちょい寝てな」
「…う…」
その言葉に誘われるように再び目を閉じるナルト。
抱きしめたままの身体からはじんわりとした熱が伝わってくる。
生きている、熱。
滑らかな頬を撫でる。
髪を梳く。
首筋に顔を埋めて匂いを吸い込む。
ナルトがいる所が自分の居場所。
その思いだけは今も昔も変わらない。
あの日、ナルトと初めて出会った日から。
「ナルト…ナルト…ナルト…」
何かの呪文のように唱えれば、名前を呼ばれるたびにナルトの寝顔が穏やかなになっていくような気がする。
安心したように幸せそうに眠る子ども。
愛しいナルト。
「ナルト…ナルト…」
「ナルトが好きなんだ」
「誰よりも、何よりも」
「きっとナルトが生まれてきた時から、俺が死ぬまで」
あいしてるよ。
「…あ、違うか。俺が死んでも、だね」
俺がナルトより後に死ぬなんて事はないだろうから。
だって、そんなこと俺が許さないし。
「…かし…」
「ん?まだ早いよー」
「かかし、カカシは…」
澄んだ瞳で、当たり前のように子供は言った。
「カカシ…俺がもし死ぬ時は、カカシが殺せよ?」
それが望みなのだと言う口を塞いで、息ごと吸い尽くして。
名残惜しげに唇を離しながら子どもに小さく囁いた。
「だから、お前は俺より先には死なないよ」