心が引き裂かれそうな

聞いただけで涙が止まらなくなりそうな

とても

哀しい

声がした





















05 血を浴びながら咆哮をあげるお前のその瞳に映る光景は美しかったのか





















「ちくしょう!やっぱり化け物だったんだ!」

「殺せ!早く」

「この里を守るために」

「家族のために」

「殺せ!」


































ドクリ、と血液の沸騰する音を聞いた。









































「…シカ…ル…」

「…ナルト?おい、どうした!?」










闇の中に紛れながら、一人、また一人と標的を沈めていると、突然の気配に思考が乱れた。
後方部隊の俺とは別行動の、先行部隊にいるはずのナルト。
数年前に比べて、背は伸びたが細さは相変わらずの身体を折り曲げ、膝をついた。
押さえた口元からしたたる、赤い液体。











尋常ではないその姿に背筋が凍る。







予期しなかった事態

失う事の恐怖

理不尽な想い

怒り







目の前が赤く染まり、ナルトがゆっくりと倒れたのが。



あの時、俺が見た…あいつの最後。






































気が付くとそこは、さっきまで居た場所ではなくて、里の外れにある林の中。
耳を澄まさなくても聞こえてくる。



悲鳴と怒声。



どうして俺がここにいるのかなんてどうでもいい。
でも俺はここにいちゃいけねえ。



俺はあいつの横にいるから、生きてるんだ。





「ナルト」































息も絶え絶えで血を吐いていたナルト。
今は全身を赤く染めていた。











狂ったように自分の爪で自らの肉を裂き。
投げられる凶器を進んで受けとめ。








早く殺してくれと、全身で叫んでいるようだった。

























ボロボロになっている里の忍たちの横をすり抜けようとすると、強い力で肩をつかまれた。
俺の最初の上司の手は、とても。


「俺らの声も、もう届かねぇんだ」


分かってる。
めんどくせぇけど。


「情けねぇよ…自分がな…」


あいつはお前のことも好きだったよ。

あいつの恋人は俺だけだけどよ。
それとは違う『好き』だったって。





「アスマ、俺行くわ」

「…あぁ」



今はほどけてる髪を、ぐしゃりとかき混ぜられた。































「−−−−−−−−っ!!!」



目を見開いたまま、潰れた喉で何かを叫び続けているナルト。
膝をつき、腕をだらりと下げる姿はまるで、壊れてしまった人形のよう。

一歩一歩、踏みしめるように近づき、両手を伸ばす。





「狐に誑かされたのかっ!」

誑かされた…確かにそうかもしれねぇ。


「あいつの仲間だ!」

ちげぇよ、俺はこいつの恋人。


「かまうな!早く殺せ!」

うるせえな。









強く

強く

抱きしめる









「なぁ、ナルト」





力が抜けたように俺へと身体を預けてきたナルトは、俺の肩口に顔をうずめたまま動かなかった。
さっきから増え続ける痛みは、もう感じない。



最近のお前、すげぇ嬉しそうだった。

認めてくれた人ができたって飛びついてきて。

その度に俺は嫉妬して。

でも同じくらい。

いや、それ以上に。

そんなのどうだっていいんだ。

























温かい身体を抱きながら、今はもう血で赤くなった金髪に顔をうずめた。
感覚のない自分の身体に舌打ちをする。
柔らかな耳たぶにキスをして、舌を這わせて。



















「愛してるぜ…ナルト…」



















そして、俺の視界は色が消えた。