あの子があんなに綺麗に笑うのは

きっと

真っ直ぐに前を見ているから

それは

悲しいほど澄んだ瞳で





















06 無償





















「今日もしゅぎょー!頑張る、ってばよー!!」


任務後にたまたま出くわしたナルトは、これから一人で修行をするらしい。
サスケに負けない、と意気込む姿はむしろ一生懸命で、どこか微笑ましいものさえ感じさせる。
シカマルとチョージと楽しそうに話している姿は、尻尾を振った子犬のようで。


「ナルト、あんたって犬みたいねー」


思わず出た言葉に、一瞬ナルトの瞳が曇ったような気がしたが、次の瞬間にはいつもの笑顔。


「俺ってば犬じゃないってばよー!俺は火影!火影になる男なの!!」


目を細めて抗議をするナルトを見つめ、ふと疑問が湧いた。





俺は火影になるってば

里を守る

皆に認めてもらうんだ





いつも言う台詞。
その中には、「だからどうされたい」というものがない。
認めてもらうというのも、存在を認めてもらう、という意味のみで。
それは当たり前の、当然のことのはずなのに。



血の気がすぅっと引いた。
ナルトは、自分のためには何も求めてはいないんじゃないだろうか。
外側に向けられるものばかりで、内側には何も。




















「イノ?」


様子のおかしい自分に気付いたのか、ナルトが心配そうな顔をしていた。
熱でもあるのかってば?と問うナルトの肩を掴んで、逆に問いただす。


「あんた、何か欲しいものないの!?」

「…は?」


突然の剣幕に怯えるナルト…全く失礼な。
シカマルとチョージは目を丸くさせながらもゲラゲラと笑っている。
この幼馴染たちはおそらく自分が何を思ったのかに気付いているに違いない。
あんたらちょっと失礼よ?











求めないのなら求めさせてあげるわ。
自分から何かを欲しがるように。
覚悟しなさい?











ゆっくり鮮やかに微笑むイノに、ナルトの顔が赤く染まった。