ともだちが欲しかった
仲間が欲しかった

一緒に笑えて
一緒に泣けて
一緒に戦って





















08 今更あんたなんかの言葉なんて届かないし響きもしないよ





















サスケが里に戻ってきた。
里抜けをして早数年、里をも巻き込んでナルト達はサスケを里に連れ戻す事に成功した。
未だ憎しみは完全には消えず、心の底で燻っているものがあったが、サスケはそれでもよかった。

浅はかで、子供で、何も見えていなかった自分。
一人だけが不幸だと思い、拒絶し、たくさんの人を傷つけた。

それに気が付いたのは、すでにどうにもならないところまできていて。
全ての自信も強さも砕け、それでも今こうしてここ、「木の葉」に帰って来た。
おそらく里の目は冷たく、受け入れてくれるものなどほとんどいないであろうことは分かっている。
抜け忍の刻印を押された忍として一生飼い殺されるに違いない。

けれど、それでも俺の居場所はここなんだと。
アイツのいるここが俺の居場所なんだと。

それだけを考えてた。












「サスケくん!」

桜色の髪を揺らし、駆け寄ってくる元チームメイト。
ナルト達と共に自分を迎えに来た彼女は、火影に呼ばれて一足先へと里へ戻っていた。
目の前で笑う彼女は、昔の面影を残しながら、優しさと強さを持ち合わせている笑顔で言った。

「おかえりなさい」
「…あぁ」

思わず下を向いた。
こんなにも言葉が嬉しく、切なく、重いものであったのだと気付く。
真っ直ぐな気持ちをぶつけてきた彼女は、今までどんな想いでいたのだろうか。









「ナルトは…?」
「ナルト?あの子ならもうすぐ来ると思うわ」

うっすらと涙を滲ませた頬を手のひらで包むと、サクラは頬を染めた。
傷ついた自分の手。
血に染められたその手がサクラの頬に触ることは、もしかしたら許されないのかもしれないけれど。
その上に小さな白い手が重なり、ゆっくりと熱が伝わる。

「サクラ…ただいま」
「…うん」













パタパタと忍者とは思えない足音を立てながら近づいてくる気配。
街中ではきっと今も、彼は少しの演技を残しているのだろう。

「ナル…ト…」

目の前が、暗くなったような気がした。
嫉妬なのか、疎外感なのか、とにかく熱が一気に何かに奪われるようだった。

「サスケ!」

笑って近づいてくるナルト。
その顔は、サスケが里にいることが嬉しいのだという気持ちを代弁している。



そして、その隣には…かつての同期の忍達。



あの時、自分が向けられていた笑顔は、彼らのもので。
今の俺には、あの中へは入れないのだということを。
その中の、目つきが悪く、昔と変わらずめんどくさそうな態度を崩さない男が、視線を寄越した。












アイツの隣には俺の居場所はなかった。
もう、俺の言葉も何も、アイツの心へ届く事はないのだろうということが。

未だサクラと繋がれた手が、冷たく冷えていくように。
痛いほど心に沁み込んだ。